3月 10

野球飯15(監修:猪谷栄様)


~ワクチン接種で気を付けること~


新型コロナウイルスもオミクロンやステルスオミクロンなど、まだまだ感染拡大がおさまらず、予断を許さない感じが続いていますね。
ワクチン接種も推奨されていますが、選手にとっては副反応や接種するタイミングなど不安なことが多いと思います。
新型コロナウイルスに限らず、今回は、一般的に予防接種の前にどのような食事や生活をすればいいのか、おさらいしましょう。
★まずは、なぜワクチン接種を行うかの確認です★
感染症にかかると、体の中で抗体が作られ、原因となる病原体(ウイルスや細菌など)に対する「免疫」(抵抗力)が作られます。
免疫ができると、再びその感染症にかかりにくくなったり、かかっても症状が軽くなったりします。このような体の仕組みを使って、病気に対する免疫をつけたり、強くするためにワクチンを接種します。
★ワクチンの種類★

 生ワクチン
病原性を弱めた病原体からできています。接種すると、その病気に自然にかかった場合とほぼ同じ免疫力がつくことが期待できます。一方で、副反応として、軽度で済むことが多いですが、その病気にかかったような症状が出ることがあります。代表的なワクチンとしては、MRワクチン(M:麻しん、R:風しん)、水痘(みずぼうそう)ワクチン、BCGワクチン(結核)、おたふくかぜワクチンなどがあります。
 不活化ワクチン、組換えタンパクワクチン
感染力をなくした病原体や、病原体を構成するタンパク質からできています。1回接種しただけでは必要な免疫を獲得・維持できないため、一般に複数回の接種が必要です。代表的なワクチンとしては、四種混合ワクチン(D:ジフテリア・P:百日せき・T:破傷風・IPV:不活化ポリオ)、日本脳炎ワクチン、インフルエンザワクチンなどがあります
 mRNA(メッセンジャーRNA)ワクチン、DNAワクチン、ウイルスベクターワクチン
これらのワクチンでは、ウイルスを構成するタンパク質の遺伝情報を投与します。その遺伝情報をもとに、体内でウイルスのタンパク質を作り、そのタンパク質に対する抗体が作られることで免疫を獲得します。今回、新型コロナウイルスの表面にあるタンパク質に対するワクチンが国内外で承認を受け、日本でも接種が開始されています。
★バランスの良い食事で栄養状態を良好に★
どのワクチン接種の場合も、栄養状態が悪いと、ワクチン接種によって体調不良や副反応が強く出ることがあります。
予防接種前は、基本的な事ですが、バランスのとれた食事を摂り体調を整えるようにしましょう。
主食・主菜・副菜といったバランスの良い食事を適量摂取します。
抵抗力をつけようと食事を過剰摂取し、エネルギー過剰になると帰って内臓脂肪が増えるため、好ましくありません。
ワクチンを接種してすぐに抗体ができるわけではありません。
数日から数か月かかるといわれ、新型コロナウイルスワクチンの場合は約2週間と言われています。
ワクチン接種から当面は暴飲暴食や不規則な生活を避けることが抗体取得には大切です。
★接種後の運動って??★

厚労省のホームページなどでは、接種当日は「激しい運動や過度の飲酒等は控えて下さい」と呼びかけています。
厚労省が公開している接種後の健康状況調査を見ると、発熱・頭痛・全身倦怠感などの副反応が多数報告されています。その他にも、ワクチン接種後に心臓障害を起こしたケースも多数報告があります。
ワクチン接種後、血圧が上がり、心臓の状態が不安定な時に筋肉トレーニングなどの無酸素運動を行い、さらに心臓への負荷がかかり、心拍数や血圧が上がると心臓や血管への負担が過度になり心筋炎や心膜炎といった心臓障害を引き起こしてしまう危険性があります。
★練習はどうしたらいいの?★
強度の高い運動をするアスリートは上気道感染(通称:風邪)にかかりやすいといわれています。強度の高い運動は免疫力を弱めると言われているからです。
ワクチン接種前はもちろん、接種直後から10日間ほどは激しい運動は控えるたほうがよさそうです。
一方で、ウォーキングなど強度の低い運動を適度に行うことは、ウイルス感染細胞の拒絶に重要な役割を持つナチュラルキラー細胞(NK)を増やし、免疫力を高めるといわれています。
ワクチン接種前後は体調を見ながら、ストレッチや適度に軽く体を動かす程度にし、激しい運動は避けましょう。
接種当日の入浴は発熱など副反応が強くなければ問題ありません。接種部位は強くこすらないように注意しましょう。
★しっかり睡眠★
睡眠は成長ホルモンの分泌を高め、体の修復力や免疫力を上げてくれるので、しっかりと休むことも大切です。
ワクチン接種した日は成長ホルモンが多く分泌されるよう、早目に休み深い眠りを心がけましょう。野球飯でも、ハイパフォーマンス睡眠を推奨しているので参考にしてください。
★副反応が出たときは…★

新型コロナウイルスワクチンは、mRNA(メッセンジャーRNA)ワクチンで1回目よりも2回目の接種の方が強く副反応が出ることがわかっています。
発熱や倦怠感などの反応がより出やすく、体温は「1度上がることで基礎代謝が12~13%上がる」と言われており、発熱でエネルギー代謝が亢進している時はより多くのエネルギーが必要になります。
でも、発熱の時は食欲も進まないことが多いですよね。また、副反応に「下痢」もあります。
そんな時は、食べられるものを積極的に摂取しましょう。口当たりのいいアイスクリームやゼリー飲料などで水分摂取も行います。
1回に摂取できる量は少なくても、こまめに意識して摂取し、解熱剤で解熱が得られ食べられそうなときはできるだけ、脂肪が少なく、高タンパク・高糖質を心がけます。
★とにかく、無理せずに★
ワクチンにより抗体ができるまでは2週間ほどかかります。
2週間とは言わないまでも、接種後1週間程度は激しい運動、特に筋力トレーニングなどの無酸素運動を避け、しっかりと栄養と睡眠を確保し、免疫力をあげましょう。
まだまだ、先の見えない新型コロナウイルスですが、感染対策としっかりと栄養と睡眠をとって、元気にプレーできることを祈っています。

猪谷 栄
アスリート栄養学インストラクター・看護師
高校2年生と中学2年生の野球息子のママです。 まったく、興味のなかった野球でしたが、息子の応援から始まり「栄養や生活習慣で野球息子をサポートしたい!」という思いが高じて資格を取りました。 栄養や日々の生活での気になることを一緒に考えていきましょう。