8月 11

ベースボールクリニック記事掲載2(高岡・富山中学)

BaseballClinic5月号『(株)ベースボールマガジン社発行』別冊付録に高岡ヤング・富山ヤングの健康面での取り組みが紹介されました。

以下、抜粋記事です。

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顕著な柔軟性の欠如

ヤングリーグ北陸支部では 2018 年から野球検診を行っている。毎年 12月に開催され、北陸支部所属の 中学部6チーム、小学部2チームが 参加している。まずは医師によって、野球肘とはどういう症状で何が問題なのかや、それに関連する肩や腰の障害について、そして障害を予防するコンディショニング方法についての座学が行われ、その後メディカルチェックとアンケートに基づく診断を行うという流れになっている。19年は中学生124人、小学生18人の計142人がこの検診に参加した。
野球肘は痛みの出る個所によって、その後の対処法が異なる。手のひらを前に向けた状態で見たときに、ヒ ジの内側が痛む場合は、フォームの改善や柔軟性を高めることで回復する可能性が高い。一方、外側が痛む場合は、運動を停止し、手術が必要なケースも多い。ヤング北陸支部の19年の野球検診では、肘エコーの結果、外側に症状が見られた中学生は6人いた(小学生は0人)。
チェックするのはヒジだけではない。ヒジに負荷をかける要因として、全身運動がうまくできていないことが多いためだ。検診の結果では、小中学生合わせて90%の選手に股関節の硬さが認められたという。また、首から脇へと神経や血管がつながっている胸郭出口と呼ばれる部分が狭くなり、血行障害や手のしびれ、痛みが生じ、指先の巧緻性が悪くなる胸郭出口症候群も中学生22人に見られた。胸郭出口症候群の原因としては猫背などの姿勢の悪さや肩甲骨の動きの硬さが挙げられる。こうしたことからも、選手の障害を予防するためにはただ投球数を制限するだけでなく、柔軟性を高め、正しい体の使い方を覚える取り組みも同時に行わなければならないことが分かる。

支部として選手をフォロー

検診は受けただけで終わるものではない。中には精密検査を受けて手術の決断を余儀なくされたり、現在症状が表れていなくても、このままでは故障につながる可能性がある選手もいるだろう。結果を受けて、チームの指導者がどのような取り組みを行うか。そのためのフォローアップが重要だと、ヤング北陸支部支部長の小川剛志氏は話す。
「検診後の総会において、各チームの代表、監督と検査結果を共有しました。また、理学療法士の方を呼び、 あらためて障害の詳細となぜ起こるのかを説明していただきました。検診で終わりではなく、これが始まりで指導者らがどうフォローするかが大事なんだという認識を強くすることが大切だと思っています」
身体面だけでなく、精神面でのケアも必要だ。長いリハビリ期間や運動停止期間を過ごす中で、野球をやめてしまう選手も少なくない。
そうしたことを防ぐため、支部では重傷だった選手のカルテを保管し、その後の経過をチームに確認してい る。18年の検診の結果、手術を行っ たことで、エースでありながら夏の 大会に出場できなかった選手には、 「今投げられなくても我慢して、高校に行って花を咲かせてほしい」と、直接激励の言葉を掛けた。 「故障は見つかった後が大事ですが、監督は日々のことで忙しいでしょうし、1人の選手だけに目を向けていられるわけではありません。だから こそ、そのほかの大人が把握し気にかけておく必要がある。支部全体で選手たちの健康を見守っていこうという意識で活動しています」
検診は、ただ受けるだけでは意味がない。選手がのびのびと野球を続けられる環境をつくるために、検診結果をもとに障害予防の取り組みや、 故障後のケアを進めていくことが何 よりも大切だろう。