9月 01

野球飯12(監修:猪谷栄様)

~夏こそ、疲労回復、お酢パワー~

アスリート栄養学インストラクターとして、ヤングで栄養のお話をさせていただくようになってから3年目になりました。
昨年から始めた「野球飯」も今回でちょうど1年の12回目のチャプターです。
この野球飯は、ヤングの相談役である小川さんから、「栄養だけでなく、睡眠も大切で密接に関わっている」と1冊の本を頂き、睡眠に必要なトリプトファンを含む食事を考えたことがきっかけでした。(チャプタ-②に睡眠と食事についてお話しています)
私自身も、年に一度の2時間の栄養の講義だけでは継続性がなく、その季節や状況にあった情報提供がもっとできればいいと考えていたところでした。
そんな、記念すべき12回目の野球飯は相談役の小川さんから「疲労回復にお酢がいいと聞いているが、なかなか食せません。男子が食せるお酢を紹介してください」と頂きました。
今回は、疲労回復にいいとよく聞く「お酢」について調べてみましょう。
★いろいろな種類があるお酢★

「お酢」といってもたくさん種類がありますよね。その中でも大きく分けると、表のようになり、それぞれに成分や味、調理方法に特徴があります。
穀物酢は、その名の通りお米や小麦など穀物を成分に作られるお酢です。酢の物や酢豚など、家庭での一般の調理によく使用します。
米酢はお米が原料です。お米が原料だけに、酢飯や和風の味付けに適しています。
黒酢は、米酢の一種で、瓶で自然発酵させたものをいいます。糖とアミノ酸の反応により、黒っぽい色になります。
黒酢は最近、健康志向の方が多く取り入れていますね。カプセルになっていたりとサプリメントとしても多くみられます。また、黒酢●●という料理名になるほど、黒酢を使用していることをアピールする料理も最近よく目にしますね。
ワインビネガーブドウ果汁をアルコール発酵させた後に酢酸菌で発酵させたものです。我が家ではポテトサラダに入れるとさわやか風味が加わり、隠し味などに使用しています。(マヨネーズ使用量の減少になり、コレステロールとカロリーカットもできますよ)
バルサミコ酢は、ワインビネガー同様、ぶどうを原料としています。バルサミコ酢は濃縮した果汁を木樽で長期熟成させたものです。フレッシュチーズにオリーブオイルと一緒にかけて食べると至福の食べ物になります(☚私の意見です 笑)
リンゴ酢などの果実酢は最近たくさんの種類が出ています。商品名で挙げると、「美酢」シリーズなどはママさんの認知度は高いのではないでしょうか。
このように、いろいろな種類のあるお酢。体の中ではどのような働きをするのでしょうか?
★体内での消化・吸収と疲労回復・ダイエット効果の関連★

理科の時間で「クエン酸回路」を聞いたことを覚えていますか?
食物が体内に入り消化され分解され、エネルギーを作るときに、クエン酸回路が働きます。この回路を効果的に稼働するにはクエン酸が必要になります。
ここで、クエン酸の量が十分に体内にあると回路は効率的に回り、栄養素をエネルギーに変えてくれます。酢がダイエット効果があるというのは、このクエン酸回路をしっかりと効率的に回し、エネルギーを作るときに多くの糖分を使用するからです。
逆に、体内のクエン酸の量が不足すると、クエン酸回路が十分に回らず、疲労の原因になる乳酸が作られ、疲労回復が得られなくなります。そして、破壊された筋肉の補修もスムーズにいかなくなります。
また、糖質や脂質が分解不足になり、エネルギーが作られなくなります。そうなると、分解されなかった糖質は脂肪に変わるために、肥満や生活習慣病の原因につながります。
クエン酸を十分に補給することで、疲労回復やエネルギー生産の促進、生活習慣病の予防ができます。酢がダイエット効果や疲労回復効果があるといわれるのはこのクエン酸回路に必要だからです。
★酢とクエン酸、実は違うがクエン酸回路では同じ役割★
今回、私自身も驚いたことですが・・・
酢=クエン酸と思っていましたが、そもそもクエン酸=酢=酢酸ではありません。酢とは全く別の物質で製造方法もちがいます。
酢は上記にあげたように各素材を発酵させてできたものです。発酵させる際に酢の独特の酸っぱさや酸味ができます。
では、クエン酸は何からできているのでしょうか??
クエン酸はデンプンに黒麹を植えつけて発酵させたものです。なので、クエン酸は本来は粉末で酸っぱさも味もほぼないのです。
そして、酢酸もクエン酸もクエン酸回路では回路を回す同じ役割を担います。
★なので、酸っぱさが苦手なら・・★
ここまでのお話で、要はクエン酸回路を十分に回せば、エネルギーが作られ疲労回復効果が得られることがわかりました。
一日の必要量は、酢=15㎖(大さじ1杯)、クエン酸=3000㎎/運動時=5000㎎と言われ、レモン半分が1日の摂取量になります。
なので、酢は料理に取り入れやすいので摂取しやすいですよね。クエン酸は、スポーツドリンクやゼリー飲料に多く含まれています。

どうしても酢の酸っぱさや酸味が苦手ならば、クエン酸やアミノ酸を多く含んだスポーツドリンクやゼリー飲料を摂取するのも一つの手です。
ただ、私の印象ではなぜかクエン酸が多く含まれている清涼飲料水は炭酸のものが多い印象があります。練習や試合中に炭酸を飲むと大変だと思うので、練習後に飲むことをお勧めします。
★酢は日常的に気軽に摂取できる★
クエン酸よりも酢酸を含む酢のほうが、日常的に料理に使用したり飲用したりと継続し摂取することが簡単にできると思います。
酢を使った料理は中国料理に多くあります。中国料理の甘酢を使った、酢豚ら天津飯は男性や選手も好きなメニューではないでしょうか。
また、ポン酢も酢酸を多く含んでいます。今の季節は、豆腐や野菜にドレッシング代わりに使うこともできます。(ただ、我が家の男性陣は完全にポン酢は苦手ですが・・・)

我が家の男性陣大好きな「酢豚」は豚肉はビタミンB群を含み疲労回復効果があります。野菜もたくさん一緒に摂取できるのでおすすめですね。夏場は消化吸収力が低下するので、野菜は素揚げせずにそのまま炒めて作ると、胃もたれ感が少なくなります。
「天津飯」も、男性や選手が好きなメニューではないでしょうか。たんぱく質を多く含む卵も一緒に摂取できます。また、具材にビタミンの吸収を促進する硫化アリルを多く含むニラを入れてスタミナUPも狙えます。また、野菜の種類にこだわらず、細切りにし、卵に混ぜることで野菜も多く摂取でき、食欲がないときでもご飯と一緒にかき込める頼もしいメニューです。

自宅でも甘酢は簡単に作れるので野菜を細切りに甘酢あんにたっぷりと入れて、たんぱく質を多く含む、魚や豆腐にかけたりとアレンジが利きます。
我が家での人気の酢メニュー「手巻き寿司」など酢飯です。お寿司や手巻き寿司、お稲荷さんはご飯はもたんぱく質を多く含む魚や卵を一緒に摂取できます。また、アレンジ次第でいろいろな野菜やたんぱく質を組み合わせることができます。
★お手軽、酢が入っている食品★

調理がなかなかできない時は、モズクなどすぐに食べられるおかずもあります。最近は、黒酢入りの納豆など健康ブームに乗っていろいろな食品があります。
まさかの、駄菓子の「よっちゃんイカ」。この中にも醸造酢が成分表の中でいかの次に醸造酢が多く含まれています。試合中はおすすめしませんが、息抜きのおやつには使えそうですね。
★最近は飲みやすい酢もたくさん★

スーパーやコンビニでも最近は、すでに飲みやすくパウチになっている商品も多く販売されています。
ちなみに私のお気に入りの「美酢」。いろいろなフルーツの味の酢で炭酸水や三ツ矢サイダーで割って飲むと飲みやすくおいしいです。
最近はゼリーパウチタイプのものも発売され、小腹が空いたときにリフレッシュします。
★酢だけではなく、基本的な生活習慣も大切に★
毎回お伝えしますが、基本的な生活習慣も疲労回復には必須です。
しっかり食べる、睡眠を十分にとる、交感神経を緩め副交感神経優位の時間を作るなど、日々の規則正し生活リズムもとても重要になります。
また「野球飯:2」の急速疲労回復と合わせて、クエン酸回路も回る食事を心がけて夏をのり切りましょう。

猪谷 栄
アスリート栄養学インストラクター・看護師
高校2年生と中学2年生の野球息子のママです。 まったく、興味のなかった野球でしたが、息子の応援から始まり「栄養や生活習慣で野球息子をサポートしたい!」という思いが高じて資格を取りました。 栄養や日々の生活での気になることを一緒に考えていきましょう。