7月 29

野球飯11(監修:猪谷栄様)

~麺類の消化時間~


雨で湿度が高い日や、気温が高く暑い日も出始めてきましたね。
シーズンも始まり、練習もきつくなってきていると思います。
選手の皆さんは疲労がたまったり、食欲が落ちてくる時期です。しっかりと睡眠をとり、食事からは栄養をきちんと摂取したいですよね。
先日、あるクラブチームさんから野球飯の講演依頼がありお話をしてきました。
ママさんたちから「暑い日はお弁当が進まないので素麺を持たせているのですが、栄養的にだいじょうぶですか?」や、「麺類って消化にいいんですか??」「麺類のなかでおすすめはありますか?」など、お弁当に麺類を取り入れることへの質問が多くありました。
今回は、練習や試合の時の麺類の上手な取り入れ方について考えてみたいと思います。

★まずは消化・吸収について再確認しましょう★

食物の摂取や消化、吸収および排便を行う臓器を消化器系と呼びます。
消化は噛む・切るなどの物理的に起こる機械的消化と、消化液による分解の化学的消化から成り立っています。
口から肛門までの消化器は長いトンネルのようなものです。
まずは、口では外から受け入れた食物を噛んで小さくします。小さくなった食物は、胃で酸によって溶かされたり塩酸によって殺菌され、小腸で消化液と混和されさらに粉々にされて吸収されます。
吸収された栄誉素は身体の内部に入り、エネルギーとなります。
吸収されなかった残りは、大腸で微生物のえさとなります。そこで微生物が作るビタミンとして吸収され、残りが便として排出されます。

★食べ物が胃にとどまる時間★


食物の胃の中での停滞時間は、固体では3~6時間です。
胃の筋肉運動によって消化液と粘液が混ざり合って、2~3分に1回の割合で少量づつ十二指腸におくられます。
油は胃での運動を抑制する働きがあります。そのため、油分を多く含む食べ物は胃での停滞時間がながくなります。また、胃から小腸に移る時間も長くなり、「胃もたれ」の状態になります。
そうなると、胃での消化もそこそこに小腸に送られて、小腸でも栄養素を吸収できずに排出されてしまいます。
食物の消化にかかる時間は上の図を参考にしてください。
油分の少ない、ごはんや食パンなどで、2.5時間、うどんで3時間ほどかかります。
パスタでは3.5~4時間、油分の多めになる中華麺は4~5時間になります。
そして、麺類は噛むことによって食物を細かくし消化液と混和させ消化を促す作業が短くなります。
そうなると、胃での消化に時間がかかり消化吸収に血流がとられ、パフォーマンスへ能力の低下につながります。
このことが、麺類よりもごはんやパンのほうがいいと言われる理由になります。

★でも、食べれないくらいなら....★
夏の練習は、暑さもあり疲労が増し、食欲も低下気味になります。
そんな中で「ごはんやパンがのどを通らずに食べられない…」という選手は多いと思います。
これは私の考えですが、「食べられないくらいなら、何でもいいから食べる!」のほうがいいと思っています。
空腹での練習は、せっかく作った筋肉からエネルギーを作り出し筋肉量の低下につながります。
ごはんやパンなどが食べられればベストですが、どうしても食べられないときは麺類でもいいので摂取し、空腹の時間をできるだけなくすことが大切です。
その時に、いつもの麺類の食べ方ではなく、消化吸収を少しでも良くなるよに、よく噛むこと意識して摂取することです。

★私も失敗の一人(笑)・麺類も少しの工夫で★
「麺類はよく茹でたほうが軟らかくなって消化にいい!」と思い、軟らかめに茹でていた私です。
先日、栄養士さんとお話する機会があり、驚く真実を発見しました。
「麺類はよく茹でると、消化が悪くなる」
まさかの、麺類は茹ですぎると、消化が悪くなるのです。
麺類はおもに小麦粉からできています。小麦粉に多く含まれるグルテンはデンプンを多く含んでいます。
このデンプンは消化酵素が入り込みやすく、消化しやすいという特徴があります。
麺類を長時間茹でると、このデンプンが流れ出してしまうため消化酵素が成分を分解しにくくなる現象が起こるそうです。また、ゆで汁にビタミンなどの栄養素も流れ出してしまい、栄養価も低下してしまいます。
逆に、あまり茹で時間が短くても芯が残ったりと食べにくく、それはそれで消化によくないため、茹で時間が守ることが栄養的にも消化的にもベストなんだそうです。

★麺類単品ではなく…★
また、麺類単品ではなく、野菜やタンパク質もプラスすることが大切になります。
夏の麺類弁当によくある「冷やし中華」
中華麺よりもうどんのほうが油分が少なく消化に時間がかかりません。中華麺からうどんにチェンジすることもできますよね。
そして、冷やし中華などの麺類はトッピングに卵やサラダチキン、ハムなどタンパク質を組み合わせやすいと思います。
トッピング野菜では、キュウリは汗で失われたカリウムの補給もできます。ブロッコリースプラウトはビタミンを多く含んでいます。トマトはリコピンを含み抗酸化作用があります。

焼きそばも、野菜とタンパク質を同時にうまく摂取できるメニューです。
炒めるときに油は控えめにします。野菜を多めに入れ、お肉でタンパク質も補給できます。
我が家では、麺を少なめにしジャガイモなど消化のいい炭水化物を使用することでエネルギー量を下げることなく消化にも優しい「ジャガイモ焼きそば」が定番です。
少しの工夫で、麺類でも消化に負担をかけず、必要な栄養素を摂取することが可能なことが、今回、私自身もわかりました。

猪谷 栄
アスリート栄養学インストラクター・看護師
高校2年生と中学2年生の野球息子のママです。 まったく、興味のなかった野球でしたが、息子の応援から始まり「栄養や生活習慣で野球息子をサポートしたい!」という思いが高じて資格を取りました。 栄養や日々の生活での気になることを一緒に考えていきましょう。