6月 25

野球飯10(監修:猪谷栄様)


気温が高い日があるかと思うと、雨で肌寒い日もあり体調を崩しやすい季節になりました。また、五月病という言葉もあるように新しい環境に疲れが出やすい時期でもあります。体調管理に気をつけ、しっかりと睡眠と食事をとり乗り切りたいですね。
新チームになり練習や試合も軌道に乗り始めると同時に、選手の中には新しいチームメンバーに脅威を感じたり、自分の実力をもっと上げたいと思うことも少なくないと思います。
今回はあるお父さんからの質問です。
お父さんも栄養に関心を持ってもらえうようになり、私自身、ママとしても栄養インストラクターとしてもうれしい質問でした。(笑)

少し前までは、「プロテイン」といえば「ジッパー付きの大きな袋に粉末が入っていて、シェイカーで水や牛乳で溶かし、粉っぽくおいしくない飲みづらいもの」というイメージ(←実際にそうでした(笑))があると思います。
ここ数年、タンパク質やプロテイン摂取はスポーツの世界以外でも注目を浴びています。病院でも、「リハビリテーション栄養」と言って、低栄養の高齢者に効果的にリハビリを行うために、食事の中でもタンパク質を補う、特にタンパク質の中でもBCAAなど特定の栄養素の補給の必要性が言われるようになっています。
前回の野球飯5で、タンパク質の中の「BCAA」についてお話しています。興味のある方はバックナンバーを振り返ってみてください。
スポーツ界はもちろん、医療分野でも注目を浴びているタンパク質やプロテインですが、スーパーやドラックストアでも手軽に飲めるパックタイプのものや、コンビニエンスストアでもプロテインバーやサラダチキンバーなど簡単に摂取できるものも多くあります。
★いまさらの、タンパク質とプロテインって違うの?おなじなの??★
プロテインという名前を聞くと一種類の物質名のように感じてしまいがちですが、そもそもプロテインとはタンパク質のことです。 筋肉に欠かせない物質のタンパク質には筋トレと合わせると有用なものがあります。 その中でも摂っておきたい代表的なものに 「ホエイ」「カゼイン」 があります。

★プロテインの説明をしておきながら、プロテインは基本的に不要!!★
基本的に、選手のみなさんは今、体を作る大切な成長期に当たります。
毎日、必要なエネルギーをきちんと摂取していれば、プロテインは必要ありません。
食事トレーニングの時にもお話しましたが、体重割合で計算するとジュニアの野球選手は毎日3000~3500㎉の栄養補給が必要になります。
そして、糖質・タンパク質・脂質・ビタミンなどの食事の割合を考えてみると・・

主食になる糖質は全体の60%、主菜になるタンパク質は30%の配分になります。
このバランス配分をもとに総カロリーを踏まえて考えると・・・・

1日にごはんをお茶碗10杯分=1.3~1.4合の摂取が必要になります。なかなか1食では厳しいので、補食で無理なく摂取することを目標にします。

タンパク質も同じように体重で考えると・・・

だいたい毎日120~150gが必要になります。大まかなタンパク質量を見ると、次のスライドになります。

毎日3食、バランスよく主菜を摂取すると、1食に30gの摂取×3=90gが可能になります。そして、不足分はいつもの定番の考えで、納豆や魚肉ソーセージやシーチキンをトッピングで補うとおおむね、毎日の目標タンパク質量はクリアされます。
そこに体を大きくしたいと、さらにプロテインを追加すると・・・

体は消化機能の容量を超えて処理できなくなります。そうなると、せっかくタンパク質を摂取しても脂肪に変換してしまいます。
さらに、過剰摂取になると、肝機能障害や便秘や下痢を引き起こしてしまいます。
最近の研究報告では、タンパク質は体重の1.5倍しか毎日処理できないという報告もあります。残ったタンパク質は脂肪に代わるか、肝臓や腎臓で処理・排泄されてしまうのでやはり、適量を食事から摂取することで十分だといえます。
★参考までに、我が家のプロテイン状況★
二人の息子の野球生活で、私も体を大きくしてやりたいと思い、プロテインを取り入れていた時期がありました。
長男君が小学校の5年生の時に初めて「ジュニアプロテイン」を取り入れました。毎日ではなく、練習のある日の練習後に指定量の半分から摂取しました。
しかし「粉っぽくておいしくない」「練習終わりにこんな甘くてのどが渇くものは飲めない」などかなりの不評で、いろいろメーカーを変えたり味を変えたり・・・
結局は続かずに、中学に入ってしばらくで食事でのタンパク質摂取に切り替えました。
「タンパク質摂取!」と考えると大変に聞こえますが、難しく考えずに単品でもトッピングでもタンパク質製品をいつもの食事にプラスすることを心がけています。
納豆・魚肉ソーセージ・ツナ・枝豆・なんにでも粉チーズやとろけるチーズをのせる・コンビニのささみバーやレジ横のからあげ系が長男君のお気に入りです。
タンパク質吸収を上げるためにブロッコリーやホウレン草、ブロッコリースプラウト(←ビタミンCを多く含み切るだけで食べられるのでお手軽食材です)などビタミンの多い食材も積極的に取り入れています。

次男君の場合は、ここ数年、プロテインブームもあり味も種類もかなりバリエーションが増え、飲みやすくおいしくなりました。ヤングの練習後20分以内の車の中でZAVASを1本飲んでいます。

★結論、元気に大きく育っています(笑)★
中学1年時、160㎝/55㎏だった長男君。現在、高校2年生になり、178㎝/75㎏/体脂肪率:17%となっています。プロテインなしでも、身長は18㎝伸び体脂肪を増やすことなく体重と筋肉UPが図れ、順調に成長しています。もう少し筋力+体重UPを計画し、自主的な朝練習で筋力トレーニングを取り入れ、タンパク質の消費を促しながら、必要量の摂取UPを心がけて食事を準備しています。
次男君も、中学1年時、158㎝が一年間で169cmと11㎝伸び、伸び盛り真っただ中です。
結論は、しっかり食べてその分ロスがないようにしっかりと体を使い消費することが大切です。
このバランスが取れれば、プロテインはあえて必要はありません。
逆に、食が細く食べられない、練習後に思うように食事が進まない時の救世主的に摂取することはお勧めします。
★摂取するなら、ホエイを、自己調整量で!★

そして一番初めに、プロテインの種類をお伝えしました。成長期の選手の皆さんには「ホエイプロテイン」をお勧めします。
ホエイプロテインは、大豆プロテインやカゼインプロテインと比較すると、消化吸収が穏やかで胃腸への負担が少ないのが特徴です。
スライドに示したように、摂取時間や摂取量は注意が必要です。そして、やっぱり、基本は毎食の食事からの摂取が理想になります。
★あと何年かしか・・・★
選手の成長は親にとっても楽しみですよね。私自身、なにか頑張る子供のサポートができないかと思い栄養学を学びました。
食事に配慮することで素直に大きく成長していく息子達を見ることは、本当に楽しくやりがいがあります。
これも、あと数年しか子供に食事やお弁当を作ることができないかと思うと、楽ができてうれしいと思う反面、寂しい気持ちも大きいです。
そう思うと毎日の食事が、食べることだけではなく、食事の大切さ、コミュニケーションや今後、大人になった時の食事に対する自己管理にもつながる大切な食事トレーニングになっていると日々感じます。
毎日大変ですが、子供の成長をを楽しんで食事に取り組んでもらえると、私もうれしいです。

猪谷 栄 アスリート栄養学インストラクター・看護師
高校2年生と中学2年生の野球息子のママです。 まったく、興味のなかった野球でしたが、息子の応援から始まり「栄養や生活習慣で野球息子をサポートしたい!」という思いが高じて資格を取りました。 栄養や日々の生活での気になることを一緒に考えていきましょう。