5月 07

野球飯9(監修:猪谷栄様)


お天気のいい日が多くなり、気候も気持ちよく野球には最適な季節になりました。もう数か月もすると夏になり灼熱地獄になりますが..(笑)この気持ちの良い季節を楽しんで野球に取り組んでほしいと思います。
今回は、我が家のエピソードから…
ここ数カ月、我が家の野球息子の二人ともが「足首が痛くて練習ができない」と言ってきました。
転んだり捻ったりなど何かしたわけでもなく、腫れたり傷があるわけでもなく..しばらくシップ外用薬を貼付し様子を見ていましたが改善が見られませんでした。

悩んだ末に、整骨院を受診してみることにしました。
私自身が看護師であることもあり、レントゲンやCT、MRIやエコーなどの画像を伴う診断はエビデンスがあり納得できますが、整骨院や接骨院の電気を流したりブラインドでのマッサージには確信が持てず、今まで受診したことはありませんでいた。(整骨院ファンの皆さんすみません)

半信半疑で受診した整骨院では、二人とももともと関節が固いことが最大の原因でした。
前脛骨筋が固くなり、関節も硬いため前脛骨筋の腱も伸び縮みができなくなり、足首の痛みを引き起こしていました。長男の場合はそれが土踏まずまで影響され足の裏の痛みも引き起こしていました。
整骨院で電気を流し筋肉の血流を促し筋肉の修復を行い、筋膜リリースを行なうと痛みがとれ、関節可動域も広がり蹲踞(俗に言う和式トイレ座りのことです)ができるまでに可動域が上がりました。
整骨院の先生からは、「最近の子供は関節が硬く体の使い方が下手な子が多いため、筋肉関節に負荷がかかり痛みを引き起こすことが多い」と言われました。
また、「慢性的な痛みや筋肉や関節の硬さは徐々に蓄積され、本人も「いつもこんなものだから」と思い、気づかないうちに筋肉や関節に負荷をかけ損傷している」とのことでした。
そして、いままでは痛み=冷やす・アイシングだと思っていましたが、急性期でなければアイシングではなく「温める」ことが大切になることを教えていただきました。
今回は、「冷却」と「温熱」について考えてみましょう。

★「傷害」と「障害」★

前回の野球飯でもお伝えした、「傷害」と「障害」が今回は判断のポイントになります。
野球に関するには二つの種類があることをお伝えしました。
デッドボールや走塁中に足を捻ったなど急に怪我をした場合を「外傷」といいます。
投げすぎて肩が痛い、スイング動作を繰り返して腰が痛いなど時間とともに怪我が悪化してしまうものを「障害」といいます。
基本的に、急性期のスポーツ「傷害」が起こった場合は患部を冷却するアイシングが推奨されます。しかし、怪我をして数日、数週間たった状態になると今度は患部を温めることが勧められます。
これは、怪我をした部分の組織がどの程度回復しているか回復過程によって変わってきます。

★「傷害」=アイシング・冷却★

怪我をしてすぐの時は患部は氷などを使って冷却を行います。これは、炎症を拡げないよう抑える効果を期待して行います。炎症症状は怪我をしてからおよそ48~72時間程度(2~3日)続くと言われており、この期間は患部の炎症が拡がらないよ冷やすことが優先されます。

★あわせて「RICE」を★

炎症時には冷却に加えて「RICE処置」を一緒に行うと効果的です。
R(Rest):安静 静かに休む  炎症がひどくならないように安静をとります
I(Icing):冷却 患部を冷やす 炎症が拡がらないように冷却
C(Compression):圧迫 適度な圧迫 痛みがある場合は控えましょう
E(Eivation):心臓よりも高く 血流を抑制します
どれも痛いときには自然にやっている行為ではないでしょか。

★冷却のやりすぎは注意!!★

ここ数年はジュニアや高校野球でもけが予防に、投球制限ができました。以前のように投げすぎで肩を痛めるということは減ってきていると思います。なので、基本的に怪我でない限り投球後のルーチン的な冷却は不要といわれるようになっています。
海外などでは投球後の冷却はほとんど実施されていません。日本のプロ野球でも最近は冷却をしない方向になっています。
投球後に肩や肘の張りを感じた場合は短時間の冷却を実施します。冷却も大切ですが、ストレッチやダウンをしっかりと行い、筋肉の張りをとることが大切です。
冷却の時間の目安は肩なら15分ほど、肘ならば10分ほど、捻挫などの怪我の場合は15分ほどです。
痛みの感覚がなくなり冷たいとも感じなくなれば、冷却中止でOKです。いつまででも冷やしていることは不要です。

★「障害」=温熱・温め★

炎症症状は怪我をしてから48~72時間ほど続きますが、その間に細胞レベルでは怪我の修復が進められて今度は「温める」ことに切り替える必要があります。
目安としては、患部に熱感がなくなり腫れや内出血が収まり、動かしても痛みがない程度のことです。

ここからは、組織の再生を促すために、「温め」ることになります。
また、慢性的な痛みでなる「障害」の場合の原因は、炎症による痛みよりも筋肉や関節が硬くなって動きが悪くなることで起こる痛みであったり、血流の低下が原因となっている場合が多いです。
このケースでも「冷やす」ことよりも「温める」ことが重要になります。
冷却が必要な期間は2~3日でそれ以外は、日々「温める」ことを意識することが大切だということを今回、私自身が学びました。では、具体的にどうやって「温める」を取り入れていけばいいのでしょう??

★外からの物理療法・中からのストレッチ★

「温める」方法は2種類あります。、
蒸しタオル(電子レンジで作るホットタオルがお手軽です)を患部にあてるなど外から物理的に温める方法と、ストレッチやアップなど体の中から温める2つの方法があります。
「傷害」の怪我の場合は、しばらく動かしていなかったため、再発防止もかねて全身のアップとは別に時間をとって患部の十分なストレッチが必要です。
慢性的な「障害」の場合も十分なストレッチで体を十分に温め、筋肉や関節を柔らかくしておくことが鉄則です
また、野球飯2で紹介したようにゆっくりと入浴しその後のストレッチで筋肉や関節をほぐすなど日々のメンテナンスも重要になります。
そしてリラックスした状態で眠りにつければ、急速疲労回復の時にお伝えした良質な睡眠にもつながります。

★あったか味噌汁・スープ★

食事の面からも体を中から温めることができます。
今回、栄養士さんとお話をする機会があり、我が家のエピソードをお話ししました。
「痛みがあって凹んでいる、筋肉の修復を促し体を温めて血流をよくする料理はありますか?」と相談すると、「カレー鍋」を教えてくださいました。
選手は基本的にカレーが好きですよね(例外な選手もいると思いますが..)
カレーには香辛料が使用され、食べると血流が良くなります。また、鍋にすることで野菜もたくさん摂取でき、スープもごはんにかけたりうどんを入れたりと栄養素を余すところなく摂取できます。

豚肉を入れることでビタミンAを摂取でき疲労回復効果も期待できます。
また、チーズや牛乳を入れることで味がまろやかになると同時にカルシウムの摂取も期待できます。
そして、鍋を囲んで家族と楽しく食事することでメンタル面でもリラックスすることができます。
我が家でもやってみたいと思い、息子たちに相談すると「いつもの味噌鍋がいい」と保守的な返事が…我が家の男子は冒険が嫌いなようですが、そのうち突然出して食べさせたいと思っています(笑)

★すべてはつながっている★

今回で9回目の投稿の野球飯。毎回、単品のテーマでいろいろと私の興味や野球ママさんからの質問を取り上げて投稿してきました。
ここ数回、毎回思うことが「すべてのことはつながっている」ということです。
バランスの取れた成長期の食事・入浴後のストレッチ・リラックスした環境での良質な睡眠・朝ごはんを食べて空腹時間を作らない、練習前後の栄養補給、今回の怪我への対応…..
毎回どのテーマでも、日々の生活が大切になってくることを毎回考えさせられます。
選手たちが長く楽しく思いっきりプレーできるよう、過去の野球飯を振り返ってみてもらえると嬉しいです。

猪谷 栄 アスリート栄養学インストラクター・看護師
高校2年生と中学2年生の野球息子のママです。 まったく、興味のなかった野球でしたが、息子の応援から始まり「栄養や生活習慣で野球息子をサポートしたい!」という思いが高じて資格を取りました。 栄養や日々の生活での気になることを一緒に考えていきましょう。